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第八話 ラジカセ一つで人は死ぬ
あれは中学三年生の時。友達と追いかけっこをしていた自分は追って来る友達の鼻先でガラス戸を閉めた。今思うと馬鹿な事をしたものだが咄嗟の事でやってしまった。そう、おそらくそれで友達が止まるだろうと期待していたのだ。だから後ろを振り返ったのだ。いや、違うな。閉めた途端にそのあとおこる事態が想像できたんだ。だから振り返った。つまりこの時からスローモーションはスタートしている。
振り返った自分の目に飛び込んで来たのは、まったくスピードを緩めずガラスに突っ込む友達の姿だった。砕け散るガラスのきらきらと舞う感じ。あ、目に入るとまずいなでも友達の目の先には手があるから大丈夫かとか、短パンに刺さろうとしている破片はないな、とかまさにサムペキンパーのスローモーションのように細かく観察することができたのだ。
そもそも昔から全ての動物の脳の知覚スピードが同じはずはないと思っていた。
「IWAMAL」という漫画をやっていたときから動物の反射神経や知覚のスピードはみな同じはずはないと思っていた。漠然とだが。人間にとっての一年と他の動物の一年とでは多いに違う。つまり一秒、というこの時間の感覚も人間だけのもので他の動物にとってはもっと長かったり短かったりするのだ。
人間が感じる一秒という時間の感覚を他人と共有させているのは何だろう?間違いなく脳である。
それが大きくズレたらどうなるだろう?
またあるスポーツ選手は集中力を高めることでボールが止まって見えるという。
こういった妄想がぐつぐつと煮詰まって行ってクロックアップになっていく。

もちろん、「新世界ルルー」「不思議な少年」「マトリックス」「プライベートライアン」などが深くかかわって空手チョップの回になったのは言うまでもない。
振り返った自分の目に飛び込んで来たのは、まったくスピードを緩めずガラスに突っ込む友達の姿だった。砕け散るガラスのきらきらと舞う感じ。あ、目に入るとまずいなでも友達の目の先には手があるから大丈夫かとか、短パンに刺さろうとしている破片はないな、とかまさにサムペキンパーのスローモーションのように細かく観察することができたのだ。
そもそも昔から全ての動物の脳の知覚スピードが同じはずはないと思っていた。
「IWAMAL」という漫画をやっていたときから動物の反射神経や知覚のスピードはみな同じはずはないと思っていた。漠然とだが。人間にとっての一年と他の動物の一年とでは多いに違う。つまり一秒、というこの時間の感覚も人間だけのもので他の動物にとってはもっと長かったり短かったりするのだ。
人間が感じる一秒という時間の感覚を他人と共有させているのは何だろう?間違いなく脳である。
それが大きくズレたらどうなるだろう?
またあるスポーツ選手は集中力を高めることでボールが止まって見えるという。
こういった妄想がぐつぐつと煮詰まって行ってクロックアップになっていく。

もちろん、「新世界ルルー」「不思議な少年」「マトリックス」「プライベートライアン」などが深くかかわって空手チョップの回になったのは言うまでもない。
第七話 空手チョップ
ここで初めてクロックアプが出て来る。
前述、「脳と心」に脳血栓で能のある部分が動かなくなった女性が出て来る。
側頭葉の中央部〜MT野(第五視覚野) が損傷を受けた彼女は『動き』を見ることができない。
連続した動きを認識できないので、止まった一枚ごとの絵としてしか世界を見ることができなくなってしまったのだ。もちろん世界は常に動いているので彼女には以下のように見える。
最初遠くに見えた車の静止画が次の瞬間にはすぐ手前まで来ている。
注ぎ始めたティーカップ(空の状態)が次には溢れ出ている。
知人が歩いて来て声をかけようとしたらすでにいない。など・・・

この回にはかなり衝撃を受けた。
何故かというと、動きを記録するには(ムービーカメラやビデオなど)一秒間に24〜30コマという少しずつ違った静止画を連続して記録したものを再生して動く映像と認識させる。8mm少年であった自分にはかなり昔に覚えた動きの常識である。
しかしそれは動きを記録し、擬似的に見せる為の方法であって人間の目と脳はもっと高等な仕組みを持っていると漠然と思っていたのだ。もっとすごいハイテク?というか人智を超えた仕組みがこの目と脳にはあると思っていたのだが・・何の事はない。映写機やムービーカメラと同じだったのだ。(もしかすると本当には違うのかも知れないがこの番組を見る限り基本の仕組みは同じと思えた。当時は)

と、ここまで考えてムービーカメラはコマ数を落とすと早送りに見える。(チャッチャカしたチャップリンのような動き)
逆にするとどうなるか?コマ数を増やすと所謂スローモーションになる。
じゃあ、人間の目では?
そこで、ふと思い出した。自分の今までの人生でスローモーションに見えた事が二度だけあった。
(厳密には後からそう思ったということだとは知っているが)
そいう知識があったとしても今もっていや、やはりクロックアップする事ってあるんじゃないの?と思うほど見事なスローモーションであった。(デジャヴと同じで面白い方を信じるというスタンスが基本である)
さて一回目は中学の時、二回目はバイク事故の時だ。

前述、「脳と心」に脳血栓で能のある部分が動かなくなった女性が出て来る。
側頭葉の中央部〜MT野(第五視覚野) が損傷を受けた彼女は『動き』を見ることができない。
連続した動きを認識できないので、止まった一枚ごとの絵としてしか世界を見ることができなくなってしまったのだ。もちろん世界は常に動いているので彼女には以下のように見える。
最初遠くに見えた車の静止画が次の瞬間にはすぐ手前まで来ている。
注ぎ始めたティーカップ(空の状態)が次には溢れ出ている。
知人が歩いて来て声をかけようとしたらすでにいない。など・・・

この回にはかなり衝撃を受けた。
何故かというと、動きを記録するには(ムービーカメラやビデオなど)一秒間に24〜30コマという少しずつ違った静止画を連続して記録したものを再生して動く映像と認識させる。8mm少年であった自分にはかなり昔に覚えた動きの常識である。
しかしそれは動きを記録し、擬似的に見せる為の方法であって人間の目と脳はもっと高等な仕組みを持っていると漠然と思っていたのだ。もっとすごいハイテク?というか人智を超えた仕組みがこの目と脳にはあると思っていたのだが・・何の事はない。映写機やムービーカメラと同じだったのだ。(もしかすると本当には違うのかも知れないがこの番組を見る限り基本の仕組みは同じと思えた。当時は)

と、ここまで考えてムービーカメラはコマ数を落とすと早送りに見える。(チャッチャカしたチャップリンのような動き)
逆にするとどうなるか?コマ数を増やすと所謂スローモーションになる。
じゃあ、人間の目では?
そこで、ふと思い出した。自分の今までの人生でスローモーションに見えた事が二度だけあった。
(厳密には後からそう思ったということだとは知っているが)
そいう知識があったとしても今もっていや、やはりクロックアップする事ってあるんじゃないの?と思うほど見事なスローモーションであった。(デジャヴと同じで面白い方を信じるというスタンスが基本である)
さて一回目は中学の時、二回目はバイク事故の時だ。

第六話 スーダン解放戦線ゲリラ
今までにアフリカ大陸へは二回渡ったことがある。
一回はパリダカールラリーを見にナイジェリア。
もう一回はこのオメガトライブの取材にケニアへ。
その一回目のナイジェリア旅行のときの話。

空港へ着いてすぐに兵隊(もちろん銃を持っている)に金をせびられた。
なぜかパスポートを見せろというのでつい渡してしまったら金、金、金と言いながらパスポートを返そうとしない。一緒に来た人は先に行ってしまっていて自分一人。そのうち兵隊が一人増え二人増え三人になってしまった。口々にそりゃお前払った方がいいよ。とにかくドルを見せてみろ。などと親指と人差し指、中指をすりあわせる独特の手の動きを目の前に突きつけてくる。肩には銃。
三人ともアメリカのミュージシャンのように茶色の肌ではなく、緑色を黒になる一歩手前まで濃くしたような暗緑色(そんな色あるのか?)手のひらはオレンジに見えた。
心底ビビりまくりながら、「嗚呼、人間と人間は分かり合えないのだな。それが外国人とならなおさらだ。だからこそ分かり合おうとする努力は大事なのだ。今まで日本ではそんなことどうでもいいと思って来たが無事日本に帰ることができたら是非その努力をしよう」などと考えながら片言でお金は先に行った友達がもっている。なんならその友達に貰ってくるからとりあえずパスポートを返してくれ。とあわわ、あわわしていたらなぜかあきれて返してくれた。その時の兵隊がここに出てくる兵隊のもとなのは言うまでもありません。
レイバンの黒のサングラス越しに見える射るような目。
ダカールラリーのスタート地点はカーニバルのようになっているのだけどその敷地内には現地の人は入れません。外国人だけです。策越しに見ている少年の刺すような目。
近年の映画の大傑作に「ラストキングオブスコットランド」というのがありましたが今まで見たアフリカを扱った映画では一番雰囲気がでてました。あの映画のアミン大統領演じるフォレスト・ウィティカーの目線にあのときのナイジェリアの人たちの目線が重なります。
最後にちょっとだけ違う話。ラリーに出場する人たちは整備にウェス(通常服とかTシャツなどのボロ布)を大量に使うので大きなビニル袋にたくさんつめてそこらに置いてあるのですがそこへ現地の小さな女の子が走り出て来てウェスを一枚引っ掴んで逃げました。すぐに親らしき人と警備の人と問答のあげくその子は追い出されました。手にはウェスを持ったままです。何故ウェスなんか欲しいのかなとそばに寄って見てみると、その布にはお花のプリントがされていました。なぜか胸がざわざわしました。
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一回はパリダカールラリーを見にナイジェリア。
もう一回はこのオメガトライブの取材にケニアへ。
その一回目のナイジェリア旅行のときの話。

空港へ着いてすぐに兵隊(もちろん銃を持っている)に金をせびられた。
なぜかパスポートを見せろというのでつい渡してしまったら金、金、金と言いながらパスポートを返そうとしない。一緒に来た人は先に行ってしまっていて自分一人。そのうち兵隊が一人増え二人増え三人になってしまった。口々にそりゃお前払った方がいいよ。とにかくドルを見せてみろ。などと親指と人差し指、中指をすりあわせる独特の手の動きを目の前に突きつけてくる。肩には銃。
三人ともアメリカのミュージシャンのように茶色の肌ではなく、緑色を黒になる一歩手前まで濃くしたような暗緑色(そんな色あるのか?)手のひらはオレンジに見えた。
心底ビビりまくりながら、「嗚呼、人間と人間は分かり合えないのだな。それが外国人とならなおさらだ。だからこそ分かり合おうとする努力は大事なのだ。今まで日本ではそんなことどうでもいいと思って来たが無事日本に帰ることができたら是非その努力をしよう」などと考えながら片言でお金は先に行った友達がもっている。なんならその友達に貰ってくるからとりあえずパスポートを返してくれ。とあわわ、あわわしていたらなぜかあきれて返してくれた。その時の兵隊がここに出てくる兵隊のもとなのは言うまでもありません。
レイバンの黒のサングラス越しに見える射るような目。
ダカールラリーのスタート地点はカーニバルのようになっているのだけどその敷地内には現地の人は入れません。外国人だけです。策越しに見ている少年の刺すような目。
近年の映画の大傑作に「ラストキングオブスコットランド」というのがありましたが今まで見たアフリカを扱った映画では一番雰囲気がでてました。あの映画のアミン大統領演じるフォレスト・ウィティカーの目線にあのときのナイジェリアの人たちの目線が重なります。
最後にちょっとだけ違う話。ラリーに出場する人たちは整備にウェス(通常服とかTシャツなどのボロ布)を大量に使うので大きなビニル袋にたくさんつめてそこらに置いてあるのですがそこへ現地の小さな女の子が走り出て来てウェスを一枚引っ掴んで逃げました。すぐに親らしき人と警備の人と問答のあげくその子は追い出されました。手にはウェスを持ったままです。何故ウェスなんか欲しいのかなとそばに寄って見てみると、その布にはお花のプリントがされていました。なぜか胸がざわざわしました。
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第五話 お前は必要とされてない
「脳と心」というNHKの番組がありました。
正確にはNHKサイエンススペシャル脅威の小宇宙・人体?「脳と心」だと思います。
初めて見たのはいつだったかビデオで繰り返し見ていました。一話一話がドラマチックでとても面白く進行役の養老先生の声にうっとりしていながら見ていました。
クロックアップという言葉はまだ知らなかったのですがこの「脳と心」のどれかの話をを見たときにいつかこういうことを扱った話を書きたいと考えたような気がします。
脳を高速回転させ認識のスピードをあげればどうなるのだろう?
事故にあったとき物がゆっくり見えたのは何故だろう?(実際にはあとからそう見えたと感じるだけなようですが)
などど妄想が始まったのでしょう。
とここまで考えていたらもう一つもっと昔に遡る記憶があった。

手塚治虫の短編「処刑は3時に終わった」である。ナチスがユダヤ人科学者の発明品を手に入れようと科学者を拷問する。ナチスのリーダーは科学者が口を割るまで寝かせないようにと命令する。しかし5日たっても科学者はこたえない。なぜならば・・・その秘密を知ったナチのリーダーの企みは・・・考えてみるとクロックアップの原型はあれなんだと思う。どうにかしてあの薬を役に立たせられないかと子供の頃考えたものだ。確か「時計仕掛けのりんご」の中の一遍だ。ちなみに「時計仕掛け〜」もクーデータの話だ。(がこちらはあまり関係がない)

ビジュアル的には「マトリックス」が大きいと思う。単純に「マトリックス」を見たときは面白かったなあ。あれ以降アクションもので新しい見せ方の映画がないのが寂しい。
正確にはNHKサイエンススペシャル脅威の小宇宙・人体?「脳と心」だと思います。
初めて見たのはいつだったかビデオで繰り返し見ていました。一話一話がドラマチックでとても面白く進行役の養老先生の声にうっとりしていながら見ていました。
クロックアップという言葉はまだ知らなかったのですがこの「脳と心」のどれかの話をを見たときにいつかこういうことを扱った話を書きたいと考えたような気がします。
脳を高速回転させ認識のスピードをあげればどうなるのだろう?
事故にあったとき物がゆっくり見えたのは何故だろう?(実際にはあとからそう見えたと感じるだけなようですが)
などど妄想が始まったのでしょう。
とここまで考えていたらもう一つもっと昔に遡る記憶があった。

手塚治虫の短編「処刑は3時に終わった」である。ナチスがユダヤ人科学者の発明品を手に入れようと科学者を拷問する。ナチスのリーダーは科学者が口を割るまで寝かせないようにと命令する。しかし5日たっても科学者はこたえない。なぜならば・・・その秘密を知ったナチのリーダーの企みは・・・考えてみるとクロックアップの原型はあれなんだと思う。どうにかしてあの薬を役に立たせられないかと子供の頃考えたものだ。確か「時計仕掛けのりんご」の中の一遍だ。ちなみに「時計仕掛け〜」もクーデータの話だ。(がこちらはあまり関係がない)

ビジュアル的には「マトリックス」が大きいと思う。単純に「マトリックス」を見たときは面白かったなあ。あれ以降アクションもので新しい見せ方の映画がないのが寂しい。
第四話 晴の目覚め
さて、作品の芯になる物とは何か?
それは「ファウスト」の中にあった。

もともと「ファウスト」のもとになった「初稿(ウル)ファウスト」なるものがある。
これは「ファウスト」の原型のような物でその主題は「グレートヘン悲劇」とされている。
グレートヘン(マルガレーテ)とはファウストが若返った後、恋をし父なし子を産ませ、その結果発狂してしまう女性である。
この登場人物には実在のモデルがいて当時フランクフルトで実際にあった嬰児殺し事件のスーザンナ・マルガレータ・ブラント(名前まで一緒)がその人である。
このマルガレータは居酒屋で働き、当時は重大なタブーとされていた父なし子を身ごもってしまい、悩んだ末その子を殺してしまうのである。その後裁判にかけられ、公開処刑される。
ゲーテはこの事件に大変な興味を抱き裁判を傍聴したり資料を読みあさったそうである。
つまりこの事件は現代の宮崎事件であり酒鬼薔薇事件であり(昨今では畠山鈴香事件であり)、時代を超えて作品の芯に足るべきテーマであった。
かくしてOMEGAの芯は決まった。
そして晴のヒロインは、はじめから作品の中盤で子供を身ごもり不幸な死を迎えるであろう事だけが設定された形になった。それが誰になるかどんな顔になるか決まるのはまだまだ後の事である。

参考資料『ファウスト』と嬰児殺し 新潮選書 大澤武男
それは「ファウスト」の中にあった。

もともと「ファウスト」のもとになった「初稿(ウル)ファウスト」なるものがある。
これは「ファウスト」の原型のような物でその主題は「グレートヘン悲劇」とされている。
グレートヘン(マルガレーテ)とはファウストが若返った後、恋をし父なし子を産ませ、その結果発狂してしまう女性である。
この登場人物には実在のモデルがいて当時フランクフルトで実際にあった嬰児殺し事件のスーザンナ・マルガレータ・ブラント(名前まで一緒)がその人である。
このマルガレータは居酒屋で働き、当時は重大なタブーとされていた父なし子を身ごもってしまい、悩んだ末その子を殺してしまうのである。その後裁判にかけられ、公開処刑される。
ゲーテはこの事件に大変な興味を抱き裁判を傍聴したり資料を読みあさったそうである。
つまりこの事件は現代の宮崎事件であり酒鬼薔薇事件であり(昨今では畠山鈴香事件であり)、時代を超えて作品の芯に足るべきテーマであった。
かくしてOMEGAの芯は決まった。
そして晴のヒロインは、はじめから作品の中盤で子供を身ごもり不幸な死を迎えるであろう事だけが設定された形になった。それが誰になるかどんな顔になるか決まるのはまだまだ後の事である。

参考資料『ファウスト』と嬰児殺し 新潮選書 大澤武男







